ノーノーノーライフ(No Noh,No Life)

能狂言のこと、伝統芸能のこと、観劇レポートなどをかきます。15歳ころ能楽に出逢う。多摩美術大学芸術学科卒。12年間伝統芸能の専用劇場に勤務。スペースオフィスというユニットで能狂言グッズなど作っています。Twitter@ofispace

節分、外側の鬼から内側の鬼へ

自分の内に鬼がいるとわかってから、節分で豆を撒くことをやめた。 もう今年は豆さえ買わなかった。 ニュースでは各地の節分行事を紹介する。全身が赤や青の、ニヤニヤした変な鬼がちらほらいるのを横目で見る。 私の内の鬼はあんなに可愛くもひょうきんでも…

黒塚、人を嫌わざるを得なかった美女

銭湯にちょこちょこ通っている。水が多いところというのは、気の巡りがとても良い気がする。 その銭湯で、ハーフかわからないが成長したら東洋美女になるであろう風情の少女がいた。 私は出てきたところで、彼女はこれから入るところ。隣には日本人の、お母…

葵上、六条御息所の鬼_3

(2の続き) おそらく後場の御息所は、アイデンティティも人間の心も失って登場する。 それは御息所だろうか。それとも違う人なのか。 女性は変化する。それは、もとよりそういう性質を持っていたということだろうか。 御息所を呼び出した巫女。古来より神…

葵上、六条御息所の鬼_2

(1の続き) どうして女性ばかりが変化してしまうのか。 その前に、般若の面相に変わってしまう要因とはなんだろう。 怒りの感情であろうと思っていた。「鬼のようだ」と形容するとき、それは般若の顔に近い怒りの形相を指す。 おのうに話を移す。 変化した…

葵上、六条御息所の鬼_1

鬼をはじめて観たのはおのうの「道成寺」だった。 落ちた鐘の中から、のそっと出てきた清姫は、口が裂けツノが生えた恐ろしい面に変わっていた。 その次に鬼を知ったのは、本の中だった。 梨木香歩さんの著書『からくりからくさ』に、その鬼は出てきた。 平…

土蜘蛛、哀しい存在が語りかけること_2

(1からの続き) 土蜘蛛の精は、頼光の家来たちと戦う時に、能舞台で蜘蛛の糸をまく。 この蜘蛛の糸は紙でできており、当たり前だが手作りで、シテがふわりと投げると、とても美しく弧を描いてさあっと開き、落ちる。 虫の方の蜘蛛の糸は、家の内では古い象…

土蜘蛛、哀しい存在が語りかけること_1

洗濯物を干していたら、欄干の角に、小さな蜘蛛がうすく巣を作って留まっていた。 顔を近づけるが、赤茶色の本人はすまして知らんぷりしている。 うーん、と一瞬悩んだが、洗濯物が干せなくなるのも困るので、適当な紙を持ってきて、すくうようにして巣をは…

道成寺、コミュ障の清姫_3

(2の続き) 毒蛇となった清姫は、道成寺で安珍を探し、這いずり回る。 とうとう清姫は下ろされた鐘に気づき、鐘に七巻き巻きつくと、炎を出した。 安珍と鐘、そして蛇となった清姫自身もともに燃え尽きる。 心は、すべてを支配し人を変化させることができ…

道成寺、コミュ障の清姫_2 

(3の続き) とある安珍滞在の夜。清姫は、彼の眠る閨(ねや=寝屋、寝室)に入りこむ。 そして、いつまで私を放置するの、早く迎えに来てよ、と安珍をなじった。 安珍はたまげて、逃げ出す。 ここで、世の大半の女性が安珍に対し怒りを覚えるかも知れない…

道成寺、コミュ障の清姫_1

中学2年か3年の時、初めておのう(能楽)を観た。 誰の、何の会だったのかは残念ながら全く思い出せない。 記憶が曖昧なくせに、なぜ時期を断定できるかというと、友人のMに誘われたからだ。 私はその頃まわりの子とほとんどこみいった話はしなかったが、…